話題作 切なくて怖くて笑える『青野くんに触りたいから死にたい』


青野くんに触りたいから死にたい(1) (アフタヌーンコミックス)

SNS等で何かと話題の『青野くんに触りたいから死にたい』。
正直本当に良い作品で、これまでになかった新ジャンルを確立しているので「もっとみんなに知って欲しい」という感情と「知ってる人だけ知っていて欲しい」という感情がないまぜになります…。

何と作者はこれが連載第一回目らしく、マジで今のうちに注目しといた方がいいと思われます。

◆ 『青野くんに触りたいから死にたい』あらすじ

主人公優里ちゃん。ぼっちな女子高生。(※ぼっちな性格なのには理由があります。)青野くんに優しくされたことをきっかけに彼女の世界は青野くん一色に。

なんと優里ちゃんは青野くんに告白をし、晴れてお付き合いをすることになります。

行動力の化身

ところが、お付き合いを始めた2週間後、青野くんは交通事故で亡くなってしまいます。

青野くんが世界のすべてだった優里ちゃんにとって、世界の価値は無くなりました。
優里ちゃんは死のうとするのですが、それを止めに現れたのはなんと幽霊になった青野くん。

再び青野くんと一緒にいられるようになった優里ちゃんは大喜び。
ですがこの青野くん、時々別人のように怖い顔になり、優里ちゃんに乗り移ったりします。

青野くんは悪霊なのかなのかもしれない。
たとえ悪霊でも、青野くんと一緒にいたいと思う優里ちゃんが切ないです。

ていうか書いてて切なすぎて泣きそうです。本作は泣けるホラーギャグ漫画なのでよろしくお願いします。

◆ ギャグ漫画?ホラー漫画?

あらすじからはギャグ要素が感じられないと思うのですが、私は1巻を読んだとき本作をギャグ漫画だと思いました。残念ながら嘘松じゃなくて本気松です。

本作を読むと確実に感情が迷子になります。

椎名うみ『青野くんに触りたいから死にたい』1巻 第一話「初めての彼氏」より

えっなにこれは(困惑)

ですよねわかります。でもこのシーンは「青野くんが幽霊になって現れたけど、触れることもできない」と言って泣く優里ちゃんのため、優里ちゃんが自分に触れるよう枕人間となる青野くんという泣けるシーンなのです。

めちゃくちゃ切ないとは思うんだけど、笑っていいの?
作者はいったいどういう気持ちで描いてるんだろう…。一生の疑問です。

椎名うみ『青野くんに触りたいから死にたい』1巻 第一話「初めての彼氏」より

青野くんを抱きしめているのに、「私の匂いだ」と言って泣く優里ちゃん…。
いや、やっぱめちゃくちゃ切ないです。ギャグ漫画とか言って申し訳なかったな。

 

椎名うみ『青野くんに触りたいから死にたい』1巻 第二話「歌の練習」より

やっぱりギャグ漫画じゃないか

◆ かと思ったら、マジで怖い

椎名うみ『青野くんに触りたいから死にたい』2巻 第七話「幽霊勉強会」より

油断していたら、巻をおうごとにどんどん怖くなっていきます。

一人で夜読めないレベルです。怖すぎて眠れなくなりました(ガチ)。

この作品のすごいところなのですが、よくあるホラー漫画みたいに見開きでドーーーン!!と怖い顔がでて「キャーー!!」ってなる怖さは一切ないんです。

雰囲気と演出だけで、じわじわと背後に迫ってくる恐ろしさ。
まさにそんな感じ。

ビクッ!でもゾクッ!でもなく、ゾッ………なんですよ。(擬態語ばっかで申し訳ない)
作者様の力量としかいいようがありません。本当にすごい人だと思います。多分天才です。

◆ 青野くんを成仏させなきゃいけない

青野くんと優里ちゃんはどんどん絆を深めていきます。
青野くんが幽霊でさえなければ普通の仲睦まじいカップルなのにな…と

椎名うみ『青野くんに触りたいから死にたい』2巻 第八話「脱衣」より

可愛らしいイチャイチャシーンですら切ないです。

ところが、先ほど言った通り、青野くんは時々何だか雰囲気が怖くなるのです。

優里ちゃんに乗り移ろうとしたり、優里ちゃんを傷つけた同級生に大けがを負わせたり。

負傷者が出てしまった時点で、青野くんはちょっと良くない存在なのではないか?という疑問が浮かんできてしまいますね。

ある日優里ちゃんは不登校のクラスメート、堀江さんにプリントを届けに行きます。

堀江さんはホラーものが大好物のオカルト女子でした。

優里ちゃんは堀江さんに、青野くんのことを「昔見たホラー映画」という体で相談します。

優里ちゃんと堀江さんは仲良くなり、そこに青野くんの生前の友達・藤本くん(ハッキリ物申す系の男子)も加わって「Blue Cheer」が結成されます。

少し親切にされただけで青野くんを好きになってしまうほどぼっちだった優里ちゃん(失礼)が、皮肉なことに、青野くんの死によってふたりの友達ができてしまったという構図に、ここで勘のいい読者の皆様は気づいちゃいましたね。

「青野くんさえいてくれればいい」「たとえ幽霊でも」と言う優里ちゃんですが、きちんと現世にお友達ができてしまった今、青野くんの死を受け入れる(受け入れることが出来る)のでしょうか?

いいことなんだけど、それもなんだか寂しいような気持ちになります…。不思議な作品です。

そしてこの堀江さんなのですが、不登校女子なだけあって優里ちゃんに負けず劣らずのぼっち(失礼)。優里ちゃんや藤本くんというおしゃべりできる友達が出来たのが嬉しくてたまらないようで。

作戦会議はだいたい堀江さんのお家で行うのですが、「家の中なのになんでそんなにおしゃれしてんだよ!」というくらい毎回堀江さんの髪型や服に異常に気合が入ってるのがかわいいので、そこも注目ポイントですね。

椎名うみ『青野くんに触りたいから死にたい』2巻 第七話「幽霊勉強会」より

話がそれましたが、物語が進むにつれて青野くんはどうやら本当に良くない存在説がどんどん浮上してくるのです。

青野くんといることで優里ちゃんの命が削られていたり、霊感のある子どもには青野くんが人の姿に見えていなかったり…?

青野くん自身も、自分が良くない存在であると思い始めます。

そして青野くんは「優里ちゃんと藤本が付き合えばいい」と言うようになります。
でも本心では「優里ちゃんが藤本を好きになったら嫌だ」と思っているのです。
青野くんも「優里ちゃんに触りたい」のに、触れないのです。

こんなにも両想いなのに決して結ばれない二人が本当に切なくて辛いです。
白状すると、私4巻読んでマジ泣きしてしまいました。
漫画読んで泣くことってあんまりないんですけどね。メイドインアビス以来初めて。

本作は絶対に読まないと損です。冗談抜きで今一番おすすめの漫画です。

青野くんに触りたいから死にたい(1) (アフタヌーンコミックス)

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